人口減少で空き家はどうなる?「0円・1円・無償譲渡」の家を実際に探してみた
「家が0円」と聞いて、最初は何か特別な事情がある物件なのかなと思いました。
人口減少や空き家問題については、ニュースで何度も見ています。でも、実際に0円や1円、無償譲渡という形で手放される家があると知ると、数字だけで聞いていた話が急に身近に感じられました。
そこで、実際に0円物件を探し、空き家バンクにも登録して物件情報を見てみることにしました。
先に分かったことを書くと、0円の家は「0円で住める家」ではありません。
登記などの諸費用に加え、物件によってはリフォームや解体が必要です。井戸、上下水道、浄化槽、給湯など、普段の不動産探しではあまり意識していなかった設備も気になりました。
それでも、土地と建物の購入費を大きく抑え、その分を改修に使えるなら魅力的な場合もあります。
結局、0円物件がお得かどうかは、「物件価格」ではなく「住める状態になるまでの総額」で普通の中古住宅と比べないと分かりません。
| 選択肢 | 主にかかるお金 | 特に確認したいこと |
|---|---|---|
| 0円物件を直して住む | 諸費用+改修費 | 基礎・屋根・配管・設備 |
| 0円物件を解体して新築 | 諸費用+解体費+新築費 | 接道・再建築・上下水道など |
| 一般の中古住宅を買う | 購入費+諸費用+修繕費 | どの程度そのまま住めるか |
日本の空き家はすでに900万戸
総務省の「令和5年住宅・土地統計調査」によると、2023年の全国の空き家は900万戸、空き家率は13.8%で、いずれも過去最高でした。
1993年から2023年までの30年間で、空き家数は約2倍になっています。賃貸・売却用や別荘などを除く空き家も385万戸ありました。
国土交通省も、人口・世帯数の減少や高齢化に伴う相続の増加などにより、今後さらに空き家が増えることを見込んでいます。
もちろん、人口が減れば全国の家が安くなるという単純な話ではありません。都市部や駅に近い場所など、住宅需要が高い地域では状況が違います。
ただ、住む人を見つけにくい地域では、家を高く売ることだけではなく、空き家を次の人にどう使ってもらうかという問題が、これまで以上に大きくなっていきそうです。
大分県豊後高田市で本当に「0円空き家」が始まっていた
今回見つけた中で特に気になったのが、大分県豊後高田市の「0円空き家」です。
豊後高田市では2026年10月1日から、空き家バンクで売買価格を1円以下に設定した物件を「0円空き家」として紹介しています。
市の説明を読むと、古い家を改修して暮らす人だけでなく、建物を取り壊して新しい住宅を建てたい人も想定されています。
ただし、0円空き家を利用できるのは、市外在住の空き家バンク利用登録者です。
私も物件を詳しく見たくて登録を進めました。
最初は「0円の家ってどんな家だろう」という興味のほうが大きかったのですが、登録を進めると、思っていたより確認する内容が具体的でした。
さらに誓約内容を見ると、実際に利用する場合は住民票を豊後高田市へ移すことや自治会への加入についても確認する仕組みになっています。
ここまで見ると、「安い家をちょっと見てみたい」という人を集めるというより、本当にこの地域で暮らすことを考えている人のための空き家バンクなんだなという印象に変わりました。
0円より先に「井戸」で手が止まった
実際の物件情報を見ていて、私が意外に気になったのは価格ではありませんでした。
設備欄にあった「井戸」という文字です。
私はこれまで井戸を使って生活したことがありません。
「水道代が安くなるのかな」と一瞬思いましたが、すぐに「水質は? ポンプが故障したら? 飲み水としてそのまま使えるの?」と、分からないことが次々に出てきました。
そこで初めて、古い空き家を見るなら建物の価格だけを見ていてはいけないことに気づきました。
上水道なのか井戸なのか。下水道なのか浄化槽なのか。給湯設備はそのまま使えるのか。電気や配管は古くないか。
さらに屋根、床、基礎、耐震性などにも手を入れる必要があれば、0円で取得できても改修費は大きくなります。
市の空き家バンクも、掲載情報と実際の状態が異なる場合があり、老朽度や改修の必要性についても人によって判断が違うため、物件の状態を自分で確認することを強く勧めています。
それなら普通の中古住宅のほうが安い?
ここまで調べると、私も「それなら最初から普通の中古住宅を買ったほうがいいのでは?」と思いました。
でも、0円物件には別の見方もできます。
例えば、基礎や屋根の状態がよく、大規模な工事をしなくても使える家なら、土地と建物の購入費を大きく抑え、その分を必要なリフォームに回せます。
古い建物を使わないのであれば、解体して新築する方法もあります。
豊後高田市では、県外在住者が0円空き家を購入して取り壊し、住宅を新築する場合、条件を満たせば最大100万円の「ハッピーマイホーム新築応援金」の対象になる場合があります。
ただ、ここでも「土地が0円なら得」とは限りません。
解体して新築するつもりなら、解体費だけでなく、道路との接し方、再建築できる土地なのか、上下水道などのインフラを利用できるのかも購入前に確認したいところです。
同じ地域に手頃な価格の更地や、すぐ住める中古住宅があるなら、そちらのほうが総額を抑えられる可能性もあります。
0円なのは「物件価格」であって、住むまでの費用ではない
豊後高田市も、この点ははっきり注意しています。
「0円空き家」は費用をかけずに取得できる物件という意味ではなく、仲介手数料や登記にかかる登録免許税などは買主負担です。
状態や使い方によっては、改修費や解体費も必要になります。
例えば0円で取得した家を500万円かけて直し、長く快適に暮らせるのであれば、魅力的な選択になるかもしれません。
反対に、屋根や基礎、配管、電気、給湯などを次々に直して総額が膨らむなら、最初から500万円、700万円と価格が付いている状態の良い中古住宅のほうが安いことも考えられます。
だから比べたいのは、
「0円」と「500万円」ではなく、両方を住める状態にしたときの総額です。
ここを計算しないまま0円という価格だけで決めるのは、少し怖いと感じました。
人口減少の時代、0円の家をどう見るか
今回0円物件を探し始めたきっかけは、「人口が減っていけば、こういう家はもっと出てくるのだろうか」という疑問でした。
実際、日本の空き家はすでに900万戸に達し、国も人口・世帯数の減少などによって今後さらに増えると見込んでいます。
一方で、0円・1円・無償譲渡の物件そのものが全国でどのくらい増えているのかを示す公的な統計は、今回確認できませんでした。
そのため、「人口減少によって0円物件が急増している」とまでは言えません。
それでも、自治体が「0円空き家」という仕組みを設け、改修して住む方法だけでなく、解体して新築する方法まで案内しているのを見ると、空き家を「売れるまで待つ」だけではなく、「次に使う人へどう渡すか」を考える時代になっていることは感じます。
私自身、最初は「本当に0円の家があるんだ」というところから見始めました。
でも最後に気になったのは0円という数字ではなく、井戸や上下水道、建物の状態、修理費、そしてその場所で本当に暮らせるかどうかでした。
0円物件は、必ずしも「ものすごくお得な家」でも「タダでもいらない家」でもないのだと思います。
普通の中古住宅と並べて、土地、建物、設備、改修や解体に必要なお金まで確認する。
そのうえで「住めるまでに全部でいくらかかるのか」を比べてみることが、0円物件を見るときの一番大事な基準になりそうです。
参考資料
・総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」
・国土交通省「空き家対策モデル事業について」
・豊後高田市「0円空き家を始めました」
・豊後高田市IJU支援サイト「空き家バンク」「利用希望登録について」
※空き家の状態や設備、再建築の可否、必要な工事費などは物件ごとに異なります。購入を検討する場合は、現地確認のうえ、自治体や不動産事業者、建築の専門家などに確認してください。


