家を買ってから後悔しないために|日本の地震リスクは地域と土地でここまで変わる
日本で家を探すとき、最初に目が向きやすいのは価格、駅からの距離、間取り、周辺の買い物環境ではないでしょうか。
私も以前は、住宅選びで大切なのは「予算内で無理なく買えるか」「毎日の生活が便利か」という点だと思っていました。しかし、2011年の東日本大震災を東京で経験してから、家を見るときの基準が少し変わりました。
当時、私は新宿にある12階建てマンションの8階で暮らしていました。大きな揺れが収まったあと、ベランダの扉がゆがみ、開かなくなっていたことを覚えています。電車が止まり、道路には自宅を目指して歩く人があふれていました。大通りを大勢の人が同じ方向へ移動する光景は、今でも忘れられません。
最近も地震のニュースを見るたびに、「もしこれから家を選ぶなら、地震リスクが比較的低い地域を選ぶことはできるのだろうか」と考えるようになりました。
日本に地震がまったく起きない場所はありません。ただし、国が公開している地震動予測や自治体のハザードマップを見ると、強い揺れに見舞われる可能性や土地の弱さには、地域ごとに違いがあることが分かります。
今回は、住宅購入を考える人の立場から、地震リスクが比較的低い地域の見方と、家の価格以外に確認しておきたい点をまとめます。
日本の地震リスクは全国どこでも同じではない
地震調査研究推進本部では、全国地震動予測地図を公表しています。
この地図では、今後一定期間内に強い揺れに見舞われる確率などを、地域ごとに確認できます。将来の地震発生を日付まで予測するものではありませんが、住宅を選ぶ際に地域差を知るための資料になります。
一般に地震リスクが高いとされる地域には、首都直下地震や南海トラフ巨大地震などの影響が想定されるエリアがあります。
| 主な地域 | 住宅選びで意識したいリスク |
|---|---|
| 東京・神奈川・千葉 | 首都直下地震、液状化、密集市街地の火災 |
| 静岡・愛知・三重 | 南海トラフ巨大地震による強い揺れや津波 |
| 和歌山・徳島・高知 | 強い揺れに加え、沿岸部では津波 |
| 宮崎など九州東部 | 南海トラフの影響、地域ごとの活断層 |
一方、全国地震動予測地図では、東北地方の日本海側や山陰地方、北海道北部の一部などに、強い揺れの確率が相対的に低く表示される地域があります。
秋田県や山形県の内陸部は、南海トラフや相模トラフなど主要な海溝型地震の想定震源域から離れています。島根県や鳥取県の一部も、太平洋側の一部地域と比べれば、予測上の確率が低く示される場所があります。
ただし、これは「地震が起きない」という意味ではありません。鳥取県では過去に大きな地震が発生していますし、北海道でも大規模な地震が起きています。
地震リスクが比較的低い地域であっても、活断層による地震や、これまで想定されていなかった場所での揺れは起こり得ます。
都道府県名だけで安全性を判断できない
調べる前の私は、「危険度の低い県を選べば、それだけで安心に近づけるのではないか」と思っていました。
しかし実際には、都道府県単位の比較だけでは不十分です。同じ市内でも、地盤や土地の成り立ちによって被害の出方は変わります。
特に確認しておきたいのは、次のような場所です。
海や川に近い低地
埋立地や昔の沼地
液状化の可能性がある土地
崖や急傾斜地の周辺
盛土造成地
木造住宅が密集している地域
例えば、強い揺れで建物が倒壊しなくても、液状化によって家が傾いたり、道路や上下水道が使えなくなったりすることがあります。
反対に、地震リスクが高いとされる都道府県内でも、比較的硬い地盤の場所や、津波・土砂災害の影響を受けにくい場所はあります。
住宅購入では「何県に住むか」だけでなく、「その土地が以前どのように使われていたか」「どのような地盤なのか」まで確認する必要があります。
地震リスクは購入後のお金にも関係する
地震リスクは、安全性だけの問題ではありません。住宅を購入したあとの家計や資産価値にも関係します。
地震によって建物に被害が出た場合、外壁、屋根、基礎、給湯設備などの修理費が必要になることがあります。建物が大きく傾けば、修繕だけで対応できない場合もあります。
地震保険に加入していても、建物を新築時と同じ状態へ戻す費用が全額支払われるとは限りません。地震保険は、被災後の生活再建を支えるための保険という性格が強く、火災保険金額の一定範囲内で契約します。
また、地震保険料は都道府県と建物構造によって異なります。一般に、鉄筋コンクリート造などの耐火構造は、木造住宅より保険料が低くなる傾向があります。耐震性能を満たす住宅では、条件に応じて保険料の割引を受けられる場合もあります。
家の販売価格が安く見えても、地震保険料、将来の修繕費、災害時の生活再建費まで含めると、長期的な負担が変わる可能性があります。
災害リスクの高い土地だから必ず資産価値が下がるとは限りません。駅の近さや生活の便利さが価格を支える地域もあります。ただ、将来売却する際に、浸水・液状化・土砂災害などの情報を気にする買主がいることは考えておいたほうがよさそうです。
建物の耐震性は築年数だけで決めない
中古住宅を見るときによく確認されるのが、1981年6月以降に適用された新耐震基準です。
ただし、「1981年以降だから絶対に安全」とまでは言えません。実際の耐震性は、建物の構造、設計、施工状態、その後の劣化や増改築などにも左右されます。
新築住宅では、耐震等級も判断材料になります。
耐震等級1:建築基準法で求められる水準
耐震等級2:等級1より高い耐震性能
耐震等級3:住宅性能表示制度上で最も高い等級
耐震等級が高い住宅は価格が上がることもあります。しかし、長く住む家として考えるなら、購入時の差額だけでなく、災害時の損害を抑えられる可能性や保険料の割引も含めて検討したいところです。
中古住宅では、建築年だけで判断せず、耐震診断や住宅の状態を専門家に確認してもらう方法もあります。
家を決める前に確認したい公的情報
気になる物件が見つかったら、契約前に次の情報を確認しておくと安心です。
まず、国土交通省のハザードマップポータルサイトでは、洪水、土砂災害、津波などの情報を重ねて確認できます。
地震ハザードステーション「J-SHIS」では、将来の地震による揺れの確率や、表層地盤の情報を見ることができます。
さらに、市区町村のハザードマップには、避難場所や地域特有の危険箇所が詳しく掲載されている場合があります。
私は東日本大震災を経験してから、「建物が倒れなければ大丈夫」とは考えなくなりました。扉が開かない、電車が動かない、水道や電気が止まるなど、生活への影響は建物の倒壊だけではありません。
駅からの距離を調べるのと同じように、土地の災害リスクも住宅選びの基本情報として確認しておく必要があると感じています。
地震リスクが低い場所より、納得して選べる場所を探す
日本で家を買う以上、地震リスクを完全に避けることはできません。
そのため、単純に「地震が少ない県」を探すよりも、候補となる土地の地盤、津波、液状化、土砂災害、建物の耐震性能を一つずつ確認するほうが現実的です。
住宅価格が少し安くても、災害リスクや修繕負担が大きければ、将来の家計に影響するかもしれません。一方で、地震リスクが高めの地域でも、丈夫な建物を選び、保険や備蓄を整えることで備えられる部分はあります。
家は、住む場所であると同時に、大きなお金をかけて保有する資産でもあります。
価格や利便性だけで決めるのではなく、災害が起きたときの修理費、保険料、生活再建まで想像して選ぶことが、購入後の後悔を減らすことにつながるのではないでしょうか。
よくある質問
日本で地震がまったく起きない地域はありますか?
ありません。全国どこでも地震が発生する可能性があります。公的な予測地図で確率が低く示される地域もありますが、安全を保証するものではありません。
地震リスクが低い県ならハザードマップは見なくてもよいですか?
確認したほうが安心です。同じ県や市内でも、地盤、液状化、津波、土砂災害などの危険度は異なります。
新耐震基準の住宅なら倒壊しませんか?
新耐震基準は重要な目安ですが、倒壊しないことを保証するものではありません。建物の劣化状態や施工、地盤なども含めて判断する必要があります。
地震リスクが高い場所では家を買わないほうがよいですか?
一概には言えません。仕事や家族、交通の利便性なども住宅選びには重要です。地域のリスクを把握し、建物の耐震性や保険、避難計画を含めて納得できるかを考えることが大切です。
あわせて読みたい
👉家賃だけでは分からなかった。プロパンガスと浄化槽で知った海辺の家の「見えない維持費」
👉「買った時より高く売れることもある?」テレビを見て初めて知ったマンション価格の仕組み
参考資料
地震調査研究推進本部「全国地震動予測地図」
防災科学技術研究所「地震ハザードステーション J-SHIS」
国土交通省「ハザードマップポータルサイト」
財務省「地震保険制度の概要」



